【自生分布】サルナシは,中国,朝鮮半島,ロシア東部など東アジアに広域に自生分布しています.日本では,北海道から九州まで全国に自生分布しています.九州や四国では,1000m前後の標高の高いところに生育していますが,北海道では平野部でも見られます.ツルは丈夫で、四国の祖谷地域では、シラクチカズラと呼ばれ、祖谷のかづら橋の材料として用いられます.耐寒性が強くマイナス30℃にも耐えられるとされ,欧米では耐寒性の強いことを意味するハーディーキウイ(hardy kiwi)などと呼ばれています.しかし休眠覚醒に必要な低温要求量そのものは比較的少ないようです.
【花】雌雄異株です.花は,6月中下旬に開花しますが,香川県三木町では5月中旬に開花します.花径は2〜3cmで,花弁は白色,葯は黒色で,子房は緑色無毛です.雌花(写真左)は、雌ずいが発達し花柱は放射状に開きますが、雄花(写真右)の子房は退化しています.
【授粉】雌雄異株のため,結実させるためには,雄個体(品種・系統)の花粉を雌個体(品種・系統)に授粉する必要があります.雌個体の花も見かけ上多くの葯をもっており花粉も出ますが,発芽力は全くありません.デリシオサ種のキウイフルーツの雄品種(マツアやトムリなど)もサルナシと和合性があり,問題なく結実させることができます.サルナシの品種の中には,授粉しなくても結実するものがあります.「一才」,「エルダー」,「インパル」などの7倍性の品種は,単為結果性をもっているため,雄花粉の授粉なしでも30%程度は結実します.ただし,果実は種なしとなるため,大きさは雄花粉を授粉した場合に比べて小さくなります.
【果実】果実は5g〜20gで,果面は緑色無毛,果肉は淡緑色で,放射状に種子が入っています.果実当たりの種子数は10〜150個と品種系統により異なります.果実の可溶性固形物含量(いわゆる糖度)は15〜20%,滴定酸含量は2%前後です.アスコルビン酸(ビタミンC)を50〜300mg/100g果肉新鮮重含み,ポリフェノールも多く含んでいます.また,タンパク質分解酵素(アクチニジン)を高濃度で含んでいます.食味は良好で皮も食べることができます.
【追熟】温暖地で9月,寒冷地で10月に収穫し,そのまま室温に置いても追熟して軟らかくなり可食になります.エチレン処理すると斉一に追熟させることができますが,一旦追熟して軟化した果実は急速に過熟状態になってしまいます.硬い果実を収穫して冷蔵庫に貯蔵すれば数週間は貯蔵できます.この場合エチレンを除去したり,作用を止めたりするとさらに長く貯蔵できます.
【倍数性】サルナシには倍数性の変異があり、地理的な局在性もみられます.変種のウラジロマタタビ(A.argura var.hypoleuca)(二倍体)を加えると,四倍,六倍,七倍,八倍体が存在します.二倍体は,房総半島以西の比較的温暖な低山に自生し,屋久島が南限とされています.四倍体は広く北海道から九州に分布しています.六倍体は,本州の日本海側の多雪地帯(山形,新潟,福島など)に局在しています.七倍体や八倍体は六倍体の分布域で見出されました.
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